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役立つ講演メモ ~ 要介護者に損害を与えた場合の法的責任

  

要介護者に損害を与えた場合の法的責任

 

介護付有料老人ホームでの介護(委託先の介護サービス事業者によるものを含みます)あるいは訪問介護の際に、その担当者(職員・従業員)が要介護者に損害を与えた場合の法的責任について説明いたします。

 損害には、大きく分けて物的損害と人的損害があります。まず、物的損害の場合ですが、例えば、担当者が介護の最中に器物等を誤って壊してしまった場合、担当者は不法行為による損害賠償責任を負います(民法709条)。さらに、介護保険では、居宅サービス事業者の指定要件に法人格の取得がありますので、個人としての担当者とは別に、その担当者が所属している居宅サービス事業者(介護付有料老人ホーム、委託先の介護事業者、訪問介護事業者)も不法行為についての使用者責任による損害賠償責任を負います(民法715条)。さらに居宅サービス事業者は要介護者と介護供給契約を締結しているので、契約上の善管注意義務違反として債務不履行による損害賠償責任を負います(民法415条)。ただし、委託先の介護事業者は、要介護者とは、直接、契約を締結していませんので、要介護者に対しては債務不履行責任を負いませんが、委託者である有料老人ホームに対して債務不履行責任を負います。一方、人的損害の場合には、難しい問題があります。たとえば、担当者が要介護者を移動させている最中に転倒させてしまった場合には、担当者の過失が認定されますので、物的損害と同様に考えればいいのですが、担当者がちょっと目を離した時に、要介護者が自分で転倒してしまった場合等です。特に、訪問介護において、介護供給契約の内容が身体介護サービスではなく、生活支援サービスであった場合には、どこまで担当者に見守りの義務があるのか問題です。施設サービスについては判例が蓄積されつつありますが、居宅サービスについてはほとんど判例がないのが現状です。ただ、感覚的には、このような場合にまで、担当者に責任を負わせるのは酷のような気がします。なお、要介護者としては、物的損害に限らず、人的損害についても、保険者である市町村には責任がないのだろうかという気持ちをもたれるかもしれませんが、市町村と居宅サービス事業者は、なんらの契約関係もなく、利用者は自己の判断で、居宅サービス事業者を選択し、自己の名前で契約を締結したのですから、市町村は一切の責任を負いません。

 

損害をめぐり、指定居宅サービス事業者と利用者との間で争いとなった場合には、通常、損害額がわずかですので、弁護士に依頼して裁判にまでは至らないケースがほとんどであろうかと思われます。さらに、指定居宅サービス事業者の場合、指定基準の中に介護事故にかかる損害賠償責任保険の加入がありますので、大部分の指定居宅サービス事業者は保険に加入しており、指定居宅サービス事業者の代理人として損害保険会社の社員が示談交渉を行うはずです。しかし、介護事故が起こった場合、居宅サービス事業者としての社会的信用・責任が問われますので、損害保険会社に任せっきりにするのではなく、自らも誠実に要介護者及び関係者と対応する必要があると考えます。

 

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